孝行って自由意志でするものだよねえ
2004年6月29日 日常最近よく、以前勤めていた病院に入院していたAさんのことを思い出す。
A(女性)さんは体はいたって健康だったが、もうかなりの高齢で、痴呆が入っていた。
よく話す人だった。
痴呆の特徴として、現在のことはすぐに忘れるが、昔のことは非常によく覚えている。繰り返し繰り返し、昔のことを現在のことのように話す。こちらが暗記するほど、同じことを日に何度も何度も繰り返すのだ。
「私は自宅で子供たちを教えているの」
「息子は医者なんです」
「腰が痛くて痛くて死にそう、××(息子さんの名前)を呼んでください」
「胸が痛くて、もう死にそうです、息子を呼んでください」
「○○病院の、院長なの。内線の○○○○です。私がね、死にそうだって」
Aさんは代々続く病院の家付き娘で、語り口はおっとりと柔らかいが、根はわがままなお嬢様育ちで、自分の希望が叶えられないことに我慢ができない。
特に鬱状態がひどい時には、これをずーーっと後ろからついて言いつづける。仕方が無いので電話をかける振りをし「Aさん、今繋がらないから、後でまたかけなおしましょうね」と言ってやっと少し落ち着くのだ。
お気の毒な息子さん。
Aさんが入院する前はこれが実際毎日行われていたに違いない。
まあそんなわけで。
このとおりAさんは息子が大大大好き。
しかし当の息子は面会は月に1度と決めている。来ない時もたびたびある。来ない期間が長引くとAさんの精神状態が非常に落ち着かないため、病院から息子さんに電話をすることもあったが、絶対に月に一度以上は来ないのだ。ナース室では「息子さん、全然来ないから・・・もっと来てくれればいいのにねえ」などと言われていたが、上記の行動が毎日行われていたとしたらそれもむべなるかなだ。
そのかわりAさんの口から一度も話題に出たことのない、娘さん(娘もいたのだ)の方は週に1度かならず来る。娘さんといったってもうそんなに若くはなく、70近いはずだ。彼女は何があってもかならず週1度見舞いに来る。用事があって来れなかった時には翌週に2度来る。それも息子さんよりずっと遠くからだ。
しかし当のAさんは、
娘 が 来 て も ち っ と も 嬉 し そ う じ ゃ な い の だ 。
いやいややって来る息子と一緒の時は、まるで恋人といるみたいに自慢気な顔で周りじゅうに笑顔を振りまく。
ところが娘さんの時はむしろむっつり。わがままも言い放題。
それでも娘さんは毎週来るのだ。
なんという孝行娘だろう。
そしてなんという理不尽な話であろう。
私思うんだけど、日本は男の孝行の方が女よりもずっと楽だよね。
同居して、奥さんに自分の親の面倒を見させればそれで孝行息子だもん。
ところが女の方は、実際に面倒を見、わがままを聞き、話し相手をしてあげなければならない。それも優しく。いやいややるだけでだって十分大変なのに、それだと鬼嫁とか言われて。まったく割に合わない話だよ。
昔は跡取り息子は一家に対する責任が大きく、大変だったと思う。
しかしいまや娘の方が婚家と実家双方からの期待を受けてずっと負担が大きいと思う。
あーあ。ドイツはいいなあ。同居も面倒も相手に対する優しさも完全に自由意志で、周りから孝行を強要されるってことは無いもんなあ。
日本に帰れるのは嬉しいけど、周りからの孝行しろ攻撃にはほんと、閉口するのよね。
「あの、残念ながら私は幸せな家庭生活を送らなかったので、私は実家が嫌いなんです」って言えたらなあ。言えないのよねえ、日本では。
日本に帰れるのは嬉しいんだけど、これだけが今すごく嫌なのよね。
A(女性)さんは体はいたって健康だったが、もうかなりの高齢で、痴呆が入っていた。
よく話す人だった。
痴呆の特徴として、現在のことはすぐに忘れるが、昔のことは非常によく覚えている。繰り返し繰り返し、昔のことを現在のことのように話す。こちらが暗記するほど、同じことを日に何度も何度も繰り返すのだ。
「私は自宅で子供たちを教えているの」
「息子は医者なんです」
「腰が痛くて痛くて死にそう、××(息子さんの名前)を呼んでください」
「胸が痛くて、もう死にそうです、息子を呼んでください」
「○○病院の、院長なの。内線の○○○○です。私がね、死にそうだって」
Aさんは代々続く病院の家付き娘で、語り口はおっとりと柔らかいが、根はわがままなお嬢様育ちで、自分の希望が叶えられないことに我慢ができない。
特に鬱状態がひどい時には、これをずーーっと後ろからついて言いつづける。仕方が無いので電話をかける振りをし「Aさん、今繋がらないから、後でまたかけなおしましょうね」と言ってやっと少し落ち着くのだ。
お気の毒な息子さん。
Aさんが入院する前はこれが実際毎日行われていたに違いない。
まあそんなわけで。
このとおりAさんは息子が大大大好き。
しかし当の息子は面会は月に1度と決めている。来ない時もたびたびある。来ない期間が長引くとAさんの精神状態が非常に落ち着かないため、病院から息子さんに電話をすることもあったが、絶対に月に一度以上は来ないのだ。ナース室では「息子さん、全然来ないから・・・もっと来てくれればいいのにねえ」などと言われていたが、上記の行動が毎日行われていたとしたらそれもむべなるかなだ。
そのかわりAさんの口から一度も話題に出たことのない、娘さん(娘もいたのだ)の方は週に1度かならず来る。娘さんといったってもうそんなに若くはなく、70近いはずだ。彼女は何があってもかならず週1度見舞いに来る。用事があって来れなかった時には翌週に2度来る。それも息子さんよりずっと遠くからだ。
しかし当のAさんは、
娘 が 来 て も ち っ と も 嬉 し そ う じ ゃ な い の だ 。
いやいややって来る息子と一緒の時は、まるで恋人といるみたいに自慢気な顔で周りじゅうに笑顔を振りまく。
ところが娘さんの時はむしろむっつり。わがままも言い放題。
それでも娘さんは毎週来るのだ。
なんという孝行娘だろう。
そしてなんという理不尽な話であろう。
私思うんだけど、日本は男の孝行の方が女よりもずっと楽だよね。
同居して、奥さんに自分の親の面倒を見させればそれで孝行息子だもん。
ところが女の方は、実際に面倒を見、わがままを聞き、話し相手をしてあげなければならない。それも優しく。いやいややるだけでだって十分大変なのに、それだと鬼嫁とか言われて。まったく割に合わない話だよ。
昔は跡取り息子は一家に対する責任が大きく、大変だったと思う。
しかしいまや娘の方が婚家と実家双方からの期待を受けてずっと負担が大きいと思う。
あーあ。ドイツはいいなあ。同居も面倒も相手に対する優しさも完全に自由意志で、周りから孝行を強要されるってことは無いもんなあ。
日本に帰れるのは嬉しいけど、周りからの孝行しろ攻撃にはほんと、閉口するのよね。
「あの、残念ながら私は幸せな家庭生活を送らなかったので、私は実家が嫌いなんです」って言えたらなあ。言えないのよねえ、日本では。
日本に帰れるのは嬉しいんだけど、これだけが今すごく嫌なのよね。
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