「向こうの家」

2005年1月6日
年4回(季刊)、日本の最新情報、海外生活における便利な情報を満載した、大変好評の「JALファミリーレター(約60ページ)」
(↑JALファミリークラブ紹介WEBサイトから引用。別にJALの回し者ではない) http://www.jal.co.jp/jalmile/jfc/service2.html

を私は愛読していて、特にここで紹介されているパーティー料理レシピは最高。こちらで手に入る食材で作れるものばかりなので外れがない。ほとんど毎号分作っている。素晴らしく実用的だ。当たり前だけど日本人の味覚にも合っているしね。

さてそのJALファミリーレターの連載の一つに「帰国後の住まい」というコーナーがある。海外暮らしの経験を生かして作った設計住宅の紹介。施工主の赴任先はアメリカだったりヨーロッパだったり。なぜかアジア帰りの人は少ない。
そりゃあもう毎号「わーええわあー素敵い〜」という家々が紹介されるわけです。人が集まれる広々としたリビング、赴任先から持ち帰った高級家具、省エネ効果の高いスウェーデンハウス。

で、向こうではガラス窓は断熱性の高い三層ガラスで冬も暖かでした、とか、
向こうではリビングが30畳くらいで天井が高くて気持ちがいい、とか、
向こうでは家が社交場になるからリビングの他にファミリールームという小部屋がついて大変便利、とかなんとか、
ここに出てくる元駐在員の皆様は、まあコーナーの性質上当たり前といえば当たり前なんだけど本当に全員が「向こうの家」を褒めちぎっていて、ふあーいいなあ、駐在員ってみんな向こうではそんな豪邸に住めるものなのねえー。全員言ってるもんねーいいなー・・・
なんて思わず刷り込まれそうになるんだけど、実はここには重大な省略語が隠されている。

向こうではみんなそうなんです(支 店 長 ク ラ ス の 家  は)。

一言で駐在員と言っても、言うまでもなく支店長から平社員までいるわけで、上記のような豪邸は支店長クラスの家だけだ。
知っている支店長の家は確かにすごい。
一等地の格式のある建物、広々とした家、高い天井、本物のアンティーク家具。そこにはリビングダイニングの他にファミリールームもあるだろう。知っているドイツ人で言うと、そう、「VONフォン」のついている本物の貴族の家がそうだったよ。
しかし大部分の駐在員はいうまでもなく支店長の下で働く一般社員だ。
彼らの住まいは上記ほどには桁外れに豪華ではない(当たり前)。
いや、それでも日本での住まいよりは広いし、私から見るとかなりステキではあるのだけれど、具体的に言うと例えば夫婦二人の家族構成だったら、居心地の良い広めのリビング、夫婦の寝室、ゲストルームが一つといったところだ。天井も別に高くはない。南ドイツのせいもあるだろうけど(北より南の方が平均身長が低いのだ)。
別に豪勢ってほどのことでもないでしょう?
ちなみに我が家は学生寮に毛が生えたような安アパートで、これはもうお話にならない。リビングは広めだが、ベッドを置くと一人用通路しか余裕の無い狭いベッドルーム、換気扇も無い一人しか入れない小さな台所、玄関の扉を開けると真正面にトイレのドア。はっきり言って日本の学生用アパートの方が住環境はいいと思う。さすがにこれが海外在住者の平均って言う気は無いけど。海外だけどそういう劣悪な住宅に住んでいる人間もいるにはいるのよ。
向こうの住宅はいいいいって日本ではよく耳にするけど、別にみんながそうってわけでもないのよ。話に出てくるような大豪邸は支店長クラスだけ。忘れないでー。

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